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​​電解次亜塩素酸水の有用性

「電解次亜塩素酸水とは」

塩化ナトリウムを含む溶液を無隔膜で電解処理したもの

日本は温泉の源泉を約28,000有し、温泉地での年間利用者が1億2,700万人にも達する世界有数の温泉大国である¹⁾。温泉の効能は古くから知られ、温泉の物理的作用、含有成分による化学的作用、さらに総合的な生体調整作用に分けられている²⁾。なかでも、皮膚に作用するものは、温熱作用に基づく皮膚血行促進作用、温泉成分の化学的作用、清浄作用、末梢血管拡張作用、角質軟化作用などがある。

 一方、温泉水を汚染したレジオネラ属菌を吸入することでレジオネラ症と呼ばれる呼吸器感染症が起こることが知られている³⁾。2002年には宮崎県日向市の温泉入浴施設において7名の死者をだしたわが国最大の集団感染が発生した⁴⁾。その後4類感染症に指定されてからもレジオネラ症の感染例数は増加傾向にあり、2018年からは2,000件を超える事例が報告されている⁴⁾。

 厚生労働省は、こうした入浴施設での浴槽水の消毒にあたって、塩素系薬剤を使用し、感染症防止に努めることを示している⁵⁾。しかし利用者からは「塩素臭が気になる」、「プールのような温泉だ」などの批判が後を絶たない。こうしたなか、2004年に環境省が公表した「温泉の保護と利用に関する懇談会」の中間報告である「温泉の保護と利用に関する課題について」においても、国民は「温泉らしい温泉」を要望していることを明示している⁶⁾。

また、大河内らの報告⁷⁾では、塩素消毒された温泉は、温泉の泉質を還元系から酸化系へ大きく変化させる場合もあり、皮膚への影響も懸念されている。

 このような状況から、次亜塩素酸ナトリウムに代わる消毒剤として電解次亜塩素酸水の利用を提案するために、これまで種々調査研究を重ねてきた。



(研究テーマ)

温泉浴槽水における電解次亜塩素酸水の利用

(効果の確認)

レジオネラ属菌の生息するバイオフイルム形成を阻害する効果を確認した。

【日本防菌防黴学会・(公財)日本建築衛生管理教育センターにて発表】


(研究テーマ)

温泉浴槽水の衛生管理における電解次亜塩素酸水の有用性

(効果の確認)

温泉水の酸化及び肌への酸化防止と塩素臭の抑制効果を確認した。

【一般社団法人日本温泉学会・(公財)日本建築衛生管理教育センターにて発表】


(研究テーマ)

Legionella pneumophilaのバイオフイルムに対する電解次亜塩素酸水の効果

(効果の確認)

次亜塩素酸ナトリウムよりバイオフイルム形成を阻害する効果を確認した。

【日本防菌防黴学会にて発表】


(研究テーマ)

黒湯および蒸留水でのLegionella pneumophilaに対する電解次亜塩素酸水の殺菌効果

(効果の確認)

次亜塩素酸ナトリウムより殺菌効果が高いことを確認した。

【公益財団法人日本建築衛生管理教育センターにて発表】



以上の結果から温泉浴槽水の消毒に電解次亜塩素酸水を利用することは可能であるとの結論を得た。

 
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​​文 献

1)環境省(2020) 令和元年度温泉利用状況. 環境省自然環境局.
https://www.env.go.jp/natura/onsen/data(2021年4月6日現在)
2)前田眞治(2010) 温泉入浴の効果とは?温泉の最新健康学. pp.33―44. シナノ印刷(株). 東京
3)(公益財団法人)日本建築衛生管理教育センター(2017) レジオネラ症防止指針第4版. pp.3―8. (公益財団法人)日本建築衛生管理教育センター. 東京
4)縣 邦雄(2021) 第4章レジオネラ症の発生状況. レジオネラ研究者の会編著. レジオネラ属菌を知る第3版. pp.41―61. (株)M`sクリエイト. 神奈川
5)厚生労働省(2003) 公衆浴場における衛生等管理要領. 厚生労働省健康局長通知第21400号. https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/kenkou/legionella/030214-1.html(2021年4月6日現在).
6)環境省(2004) 温泉の保護と利用に関する課題について―「温泉の保護と利用に関する懇談会 中間報告」. 温泉の保護と利用に関する懇談会.
https://www.env.go.jp/nature/onsen/council/hogo₋riyo/o7/mat₋01.pdf (2021年4月6日現在).
7)大河内正一. 他(2005) ORP評価に基づく塩素殺菌した温泉水の泉質変化. 温泉科学.